前回、こんなことをして会社を辞めました、と結んだ訳であるが、勿論寿司の食いすぎで会社を辞めたわけではない。
サラリーマンを辞める。
これは、とてつもなく大きな決断だ。
大体、何故サラリーマンを辞めなくてはいけないのか。
Q.人は何故、サラリーマンを辞めるのか?
A.人によって、理由は様々です。
では、いくつかの理由を項目別に並べてみますので、当てはまるものにチェックを入れてください。
1.職業について
・元々、やりたい仕事ではなかった。
・やりたい仕事が他にもあった
・根本的に、仕事はしたくなかった
・会社の上司が嫌いだった
・会社の同僚が嫌いだった
・会社の社長が嫌いだった
・会社の得意先が嫌いだった
・会社の業績が悪化した
・任された仕事が上手くいかなかったため、責任をとった
・サボってばかりだったので、職場に居辛くなった
・懇意にしていた職場の人が皆、辞めていく
・残業が多かった
・ストレスが溜まって死にそうだった
・10年表彰される前に辞める事を決めていた
2.家庭について
・妻の実家で、同居することになった
・家に帰るのが辛かった
・毎晩、飲んで帰るようになった
・金がなくなった
3.家族について
・家を建てた
・同居終了!
・妻が出産
・出産休暇
・寿退社・・・
はい、私の場合、上記全てにチェックが入る訳である。
最後の寿は何だかよく判らないが・・・
ダメ人間という批判は受け入れるが、元々立派な人間だとも言ってないのだから、出来れば批判は勘弁してもらいたい。
ま、そういう訳で、私は会社を辞めた。
ただ、これから書くことはまだ誰にも言っていない、私が会社を辞めるに至った本当の理由である。
私は何故、この会社を辞める決心をしたのか?
先に登場した会社の後輩(部下ではない)村井っちが、寿司食い放題で辛い腹を、ルノアールで癒している際に、某月間ビジネス雑誌を私に見せた。
「ちょっとこれ見てください」
「なんだよ」
そこには、「会社をダメにするバカ社員」特集があった。
そこには、村井っちの(本当の)上司が実名で出ていた。
「会社をダメにするバカ社員」特集。
「結婚して子供もいるのに毎朝ママンにおにぎり作ってもらって仕事中に食ってるんですよ、育った家庭環境から全てが信じられませんね、仕事?勿論出来ませんよ」
というコメント付き。
「おまえのことじゃねえか」と、私は村井っちに言った。
「そうですけど・・・」と村井っちは言った。
「おまえ、こんな風に出されたことを気にしてるわけ?」
「っていうか、本当のことじゃねえか」
「それはそうなんですが」
「バカ!こんなこと気にして生きて行けると思うなよ!世の中ではな、○ンポ出して金もらってる奴だっているんだ。それくらいの気合がないからダメ社員なんて書かれる隙を作ってる訳なんじゃねえのか!大体、おまえ自身、おにぎり食ってることを悪いことだと思ってるのか?」
「いえ、別に」
「じゃあ、ママンにおにぎり作ってもらってることを恥ずかしいと思ってるのか?」
「いえ、別に」
「じゃあ、他に何か、後ろめたいことがあるのかよ?」
「いえ、何もないです」
「だったら人が羨ましがってることをビクビクしてんじゃねえよ。堂々とおにぎり食ってりゃいいじゃねえか」
「そうか?それもそうですね!ありがとうございます」
「村井っち」
「はい」
「オレを盗め」
「わかりました!」
オレを盗めというのは、私のような立派な人間になりなさいという意味である。
私の口癖と言うか・・・職人は手ほどきはしねえ、習いたければ盗めっ!てな感じでしょうか。
と、いいながら、この件をきっかけに、私は辞表を書く事にした。
「会社をダメにするバカ社員」特集にもっとも衝撃を受けたのは、実は私だったのだ。
私は、デリケートなのである・・・
私の上司、T課長。
私の役職はT課長係長と言われるほど、T課長は天才であった。
正月のあいさつ周り では、私たちは必ず後楽園で馬券を買ってから仕事をする、いろんな意味でのタッグチームだった。
T課長ともつ焼き屋に入った私は、ビールと煮込みを頼んだ。
これが私たちの日常であった。
仕事の反省会?
いや、単なる憂さ晴らしであった。
大概の場合、真面目な話はしなかった。
真面目な話とは、愚痴のことである。
愚痴を言うくらいなら今現在ぐらいは楽しくやりたい・・・
私とT課長の現状突破方法は間違っていた。
間違えたまま10年近く経過してしまったのだ。
T課長に、「会社をダメにするバカ社員」特集を見せた。
私は言った。
「会社辞めていいっすか?もう課長の面倒みませんよ?」
「・・・バカヤロウ?!オレだって一人で生きていけるんだよ!ちくしょう!」
ということで、T課長と2人で朝までひたすら、酒を飲んだ。