私は工場長に呼ばれた。
「穂高くん、これを君に・・・貸しといてあげるから」
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職人の道具だ!
上から、包丁、ワニ、そして、ポンポン。
貸してあげるといっても事実上新品である。
正直感動した。
他の職人たちも、喜んでくれた。
「よかったな?おめえ、これさえあれば、いくらでも靴作れるからよ、まあ頑張れや」
「はい、ありがとうございます!」
工場長は職人に言った。
「おい、もの入れひとつ、開いてんだろ?この間辞めたあいつの。それ、捨てろ。そいでそこ開けてやれよ」
道具入れスペースを貰った。
これで、私も職人の仲間入り?
ということで、これから靴の作り方レシピを簡単に紹介します。
いや、作られ方というべきか。
言っときますが、以下を読んだからといって靴が作れるようになる訳じゃありません。
本当に靴が作りたい人は師匠のページ を見てくださいね!
痛くない、疲れないと大好評神戸の靴職人が作った5Eサイズのパンプス5E外反母趾ラム革プレーン...
Vカットプレーンパンプス(ホワイト)
こういう靴のことを総称して、パンプという。
何故パンプスでないのか?
それは不明・・・
というより、ブーツとサンダル以外は全てがパンプなのである。
婦人靴の謎だ。
作り方の手順
1.先ず下ごしらえとして、外注しておいた出来上がったアッパー(製甲)に月形、先芯を入れ、ノリを塗る。
2.木型(ラスト)と言われるものに、中底(インソールの下にある、ボール紙のようなもの)を釘で打ち込み、ノリを塗る。
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3.トゥーラスターという機械で、上記アッパーとラストを合わせ、つま先部分をブシュブシュっと釣り込む。
4.職人たちがかかと部分を釘で止め、脇(ふまずのあたり)をワニで釣り込む。
場合によってはガングリ(サイドラスター)で釣り込む。
余った革を包丁で切り落とす。
5.ヒールラスターという機械で、かかと(底)部分をブシュブシュっと釘でまとめる。
6.仮止めの釘を抜く。
7.底の部分をグラインダーで起毛する。
8.熱風をかけ、革のしわを取る。
9.起毛した部分にノリを塗る。
10.既に外部に作らせておいた本底を機械で温め、はりつける。
11.圧着機で圧力をかけ、よくつける。
12.中打ちという機械でヒールをねじ釘のようなものでガタガタ!ブシュ?っと打ちつける。
13.箱に入れて、仕上げ屋に出す。
大体こんなところで出来上がり。
訳わからなくても大した問題じゃないです。(汗)
ようするに、各項目毎に担当者がいて、その項目の数くらいの人数が、底付け工として雇われていた訳だ。
ただし、4の釣り込みは一人でやるには重労働であり、各自の持ち場が終わった順に関わって、最終的には全員でやる仕事。
ようするに4の釣り込みが終わった時点で本日の仕事が終わるのだ。
釣り込みは底付けの花形仕事であり、靴の良し悪しが決まる大事な技術だ。
逆に言えば、釣り込みが下手だと腕が悪いということ。
重労働な挙句、叱られるのはいやだ。
そんなことで皆がこの工程から逃げ回っているために毎日残業となるのであった。
で、私は何をしていたのかというと・・・
・くぎ抜き
・ノリ塗り
・掃除
である。
下っ端はやはり下ごしらえからというか。
「おめえにはまだ釣り込みは無理だからよ、先ずはノリ塗りをみっちりやって、誰にも負けねえようになりな。開き時間に釣り込み教えてやっからよ」
「とにかく、ワニを使えるようになって初めていっちょうまえってもんなんだよ、ま、3年くらいやればよ、おめえもそこそこ器用みたいだからよ、機械も教えてやっからよ」
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「穂高くんのワニ、新しくて使いづらいからよ、オレが使いやすいように、馴らしといてやるからな」
「あ、ありがとうございます・・・」
ということで、私が工場長から貸して貰ったワニは、この会社が潰れるまでの間、この職人さんが馴らしてくれていた。
そして会社が潰れた時、私はこの使いやすくなっているはずのワニを盗んだのだった。
燃えないゴミとして捨てられる寸前に、ゴミ箱から。
実際、使いやすくなっているかは不明。
いずれにしても当時、私が使っていた道具はもっぱらこの刷毛だ。
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私はこのノリ塗り作業で本当に腱鞘炎になった。
次回につづく・・・
続きに興味があったらぽち!ってことで。
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